UB RAILFAN  モンゴル鉄道ガイド 補足 (新線計画ルートの移り変わり)

    補足 新線計画ルートの移り変わり

    ※計画路線のkm数についてはその当時発表のものであり、毎回統一されていません。

     

    2008年発表ルート

 

2008年末に、以下各企業の申請した3本に路線に建設許可が下りたと発表されます。

1、Energy Resourse社、ウハーフダグから中国国境ガシューンスハイトまでの270km

 世界最大規模と言われるタワントルゴイ炭鉱の石炭を中国へ輸出するための鉄道で、構想は1990年代後半からあったもの。ウハーフダグはタワントルゴイ炭鉱の中のEnergy Resourse社が権利を持つ鉱床名。一企業のための鉄道なので、当時世界中から注目を集めていた金・銀鉱山のオユトルゴイは近くを通りながら素通りする。工事終了後に一定の割合で国有化する予定。その後、工事業者もオーストラリアの建設会社に決定するのだが、許可は取り消される。

2、Mongol Alt社、ナリーンスハイト炭鉱から中国国境シベーフレンまでの48km

 これも遡れば1998年からある計画。こちらも工事終了後に一定の割合で国有化する。この時既に中国側は国境シベーフレンまで鉄道が開通している。

3、Bold Tumur Eruu Gol社、ドラーンハーン(スフバートルとダルハンの間)からバヤンゴル鉱床までの98km

 この路線だけは順調に着工し工事は2009年中に完了。2010年に晴れてモンゴル初の民間鉄道として開業。ここでは鉄鉱石が採れ、ドラーンハーンからはウランバートル鉄道で中国へ原石のまま運ばれる。 

 

(その他構想)

4、中国側の投資計画で、内蒙古自治区の阿爾山からバヤントゥーメン(チョイバルサン)までの433km

 現在あるモンゴル東部の鉄道と接続し、第2のモンゴル南北縦断線となると書かれてもいたが、実際はチョイバルサン近郊にかなりの量が埋蔵されていると推定される石炭・鉄鉱石を中国側へ輸送するのが目的。チョイバルサン~阿爾山~白城~長春~吉林~図們~北朝鮮・羅津港の大輸送ルートを築くとの事。  

5、ロシアの開発局による計画で、ロシア中央部ギジル市まで計画される鉄道を、モンゴル西部トゥーウアまで延長させる。

 そんな話が2008年にあった。トゥーウアが何処かわからないので地図の線は適当。

 


    2009年発表ルート

 

1、タワントルゴイからオユトルゴイを経由してズーンバヤンまでの418km

2、サインシャンダからバヤントゥーメン(チョイバルサン)までの605km

 2009年6月のウランバートル鉄道60周年記念時に、ウランバートル鉄道とロシア国鉄の共同で大々的に発表されたプランで、タワントルゴイの石炭をシベリア鉄道経由で太平洋岸へ運ぶルートを構築する。また沿線には、オユトルゴイ(金・銅)を始め、亜鉛・タングステン・蛍石の未開発の鉱山がたくさんある。ロシア国鉄が半分の権利を握るウランバートル鉄道の発表なので、中国側への輸送は一切考慮されない。線路幅も当然1520㎜。建設距離を少なくできるようにバヤントゥーメンからボルウンドゥルまで線が引かれる計画地図も多数存在した。

 ここでモンゴル南部で採れる石炭を中国へ輸出するか、あるいはロシア側へ輸出するべきか、そのために鉄道をどちらに向けて建設するかの大論争が起きる。中国ルートは距離も短く早期に工事を完了させる事が可能で、早い時期に税収が見込まれるのだが、中国への経済的依存を避けたい、安く買いたたかれたくない、日本・韓国等の第3国への輸出も考慮したい、ロシアやさまざまな方面の圧力もあってか、一旦は1000kmにも及ぶロシア方面ルート、線路の幅も既存かつロシアと同じ1520mmに落ち着く。2008年発表の1、2ルートの民間企業による鉄道建設は中断、どちらも石炭運搬専用の高速道路を建設する事になる。

 


    2011年発表ルート

 

 新線については、2008年に誕生したモンゴル政府が100%出資するモンゴル鉄道株式会社が所有することになり、以下が2011年8月末に閣議で承認された計画。

 

(第1期)

1、ダランザドガドからタワントルゴイ(炭鉱)、ツァガーンソブラガ(銅鉱山)を経由しサインシャンダまでの400km

2、サインシャンダからバルーンウルト、フートを経由しチョイバルサンまでの640km

 中国方面よりもロシア方面が先という方針は変わらないも、東側はサインシャンダからチョイバルサンまで一直線で結ばれていたのがフートを経由するようになり、中国各方面へのアクセスをかなり考慮した計画となる。また、モンゴル鉄道株式会社も路線となるので、ズーンバヤンからサインシャンダまでのウランバートル鉄道所有の既存路線は使用しなくなる。

 

(第2期)

3、ウハーフダグ(タワントルゴイ 4km北の石炭鉱床)からオユトルゴイ(金・銅鉱山)を経由しガシューンスハイトまで、267km

4、ナリーン・スハイト(炭鉱)からシベーフレンまで、45.5km

5、フートからタムサグブラグを経由しヌムルグまで、380km

6、フートからビチグトまで、200km

 中国方面への路線はすべて第2期。ガシューンスハイト、シベーフレンルートも復活。東側ではフートをジャンクションにしビチグト(阿爾山)に向けてのルートを統合、さらにヌムルグへの路線も計画される。

 

(第3期)

ダランダドガトからモンゴル西部へ各ルート

 これについてはとりあえず線を引いてみたという感じ。もし実現すればこの区間は標高3000m級の大山岳路線となる。

 

他にモンゴル南北縦断線のウランバートル迂回路線エルデネトから先の鉱山鉄道の計画も発表される。

 


    2012~2014年の動向

2012?年:

 ロシア方面の建設をしてから中国方面を建設するとの方針から一転、2011年に決定した第2期工事分はフート~ビチグト間以外すべて第1期とする。その中でタワントルゴイからチョイバルサン、ウハーフダグからガシューンスハイトの2ルートを先に同時進行する方針とする。ダランザドガドからタワントルゴイまでは第1期計画から外れる。

 

2013年春:

 鉄道建設にチンギス国債から2億米ドルの融資が決定。ウハーフダグからガシューンスハイトまでは路盤建設、タワントルゴイからチョイバルサンは設計開始の目途が立つ。

 

2013年秋:

 先にウハーフダグからガシューンスハイトまでの工事が着工。建設元請事業者は韓国サムスンC&T社

 

2014年春:

 モンゴルと中国の合弁会社、ガシューンスハイト鉄道が設立される。モンゴルのガシューンスハイト国境検問所と中国のガンツ・モド国境検問所の間18㎞を結ぶ鉄道で、モンゴル側はエルデネス・タワントルゴイ社、エナジー・リソース社、タワントルゴイ社の3社が51%出資、中国側から神華社が49%出資する。線路幅は標準軌。(!!国境間だけどうして別会社??)

 

 新線の線路幅について、以下のような案が国会に提出される(国会で決定される?)。

 標準軌(1435mm)がタワントルゴイ~ガシューンスハイト、フート~ビチグト、サインシャンダ~ザミンウード(既存線に新線を併設する考えか??)。

 広軌(1520mm)がタワントルゴイ~サインシャンド~フート~チョイバルサンとフート~ヌムルグ(!?ここは標準軌では…)

 

2014年夏:

 新線の標準軌採用案が国会で否決される。一方8月には中国の習近平国家主席が来蒙し鉄道建設の援助を約束。標準軌での建設が条件らしく、ここでも反対意見が出ている。

 

 この国特有の事情で、明らかに事実と異なるだろう内容も時たま新聞・TVで報道される事がある(上記のいくつかもその可能性あり)。例として、大統領が訪日した際に東部の鉄道の建設資金を全額日本が援助する事が決定した。面白いので日本がフリーゲージトレインの技術を無償で提供する事となり、線路幅の問題は一気に解決したというのもあった。

 


    2015年の現状

 

 ウハーフダグからガシューンスハイトまでの路盤工事は順調に進んでいるようで、モンゴル鉄道株式会社のウェブサイトによれば進捗率は2015年6月時点で工事進捗率は86.6%との事。

 一方、中国側のモンゴルへ向けた鉄道建設を調べてみるとかなり進んでおり、悪い言い方をすればモンゴルの石炭を求めて貪欲に手を延ばしてきたようだが、良い言い方をすればモンゴルの石炭を安価に太平洋側に輸送できる体制が整いつつあると言える。以下が中国の鉄道地図、グーグルの衛星写真で見えてくる各国境へのルートの状況。

 

シベーフレンルート

 2009年の時点でここだけは嘉峪関から貨物専用の嘉策線(嘉蒙鉄路)という路線が存在していたわけだが、2014年1月に発行された中国鉄路地図帳(中華地図学社発行)によると、額済納旗(エジン旗)をジャンクションに臨河から臨策線、清水から清緑線が完成し、計3ルートとなった。さらに哈密へと向かう路線も計画中のようで、内蒙古から新疆へ、モンゴル国境付近を通るバイパス線が出来る予定。額済納旗へはフフホトから1日1往復の旅客列車がある。

 この近辺の線路の配線をグーグルの衛星写真で確認すると右図のように非常に複雑。シベーフレンの中国側(策克)には二つの石炭積込施設があり、一つは嘉峪関方面、一つは臨河方面へ伸びている、それぞれの線路はここでは繋がっていない。清水へ抜ける線は途中に酒泉衛星発射センターがあり、これは石炭運搬のための路線ではなく、軍事目的がメインの路線と思われる。

ガシューンスハイトハンギへのルート

 ガシューンスハイトへのルートは、2014年1月に発行された中国鉄路地図帳にはまだ掲載されていないが、グーグルの衛星写真を確認すると、国境線まで数100メートルの位置まで、貨車の姿は見えないものの鉄道建設工事は完了している。路線名はまだ無いようで検索すると出てくる内蒙古の鉄道地図によれば金泉至甘其毛道口岸鉄路と表記されている。これを辿って行くと包頭に通じる。

  また、ガシューンスハイトとザミンウードの間にハンギという開かれた国境があり、衛星写真で見ると黒いトラックの列が見られ、石炭の輸出が行われている事が伺える。ここも国境から約20Kmの地点まで、包白線の白云鄂博手前から分岐する路線が伸びている。こちらも貨車の姿は見えないものの工事は完了。架線柱が見られるので電化されている模様。

 

ビチグトへのルート

 まだ鉄道は建設されていないが、検索すると出てくる内蒙古の鉄道地図によれば赤巴線の巴彦花から延長する形で計画路線の線が引かれている。

 

ハブラガアルハシャートへのルート

 ここはチョイバルサンから約100㎞北東にある中国との国境。モンゴル側でここへの鉄道計画は無いが中国側の計画図には満州里から線が引かれているのが存在する。

 

2015年6月24日 最終更新

 

 

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